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村唯一のゲイ

リトルブリテンのダフィド・トーマスは、「村唯一のゲイ」ってことをアイデンティティにして、ふてぶてしく生きていますが、昨日ARTEで放映されたドキュメンタリー映画で、ドイツの田舎に暮らす本物の「村唯一のゲイ」達の日常を見て、保守的な土地で苦労されているんだな、と少し感傷的な気分になったり、仲間や安心できる場所を求めて都会へ行く彼らに共感を覚えたりしました。

Ich kenn keinen - Allein unter Heteros

というのが映画のタイトルです。南西ドイツのシュヴァーベンの田舎で、「あなたにはゲイの知り合いがいますか?」と聞くと、誰もが「一人も知らない」と答えますし、「それは病気なのではないか」とかいうお年寄り達がいたり、ゲイパレードがあればそれに対して「早く元に戻りなさい!」と看板を持って真剣に抗議するおばさん達がいたり、とにかくすごく保守的。

敬虔なカトリック信者の多い土地で暮らす彼ら。教会のコーラスメンバーのHartmut、森で働くStefan、母と暮らすUwe、2人のゲイの息子を持つErika、そして同性愛も迫害したナチスの時代を経験し今でも静かに暮らす78歳のRichard。彼らの日常を追う静かな映画です。

ベルリン市長が就任演説でカミングアウトしたり、都会では彼らは昔に比べてずっと暮らしやすいのだと思うけれど、田舎ではカミングアウトしたとたん、Stefanの同僚の中には一緒に働いてくれなくなった人もいるという話でしたし、ゲイの息子を持つErikaが同性愛について理解を深めてもらうための討論会を準備してみたものの、参加した老人達は頭が固く、逆に息子を説得するありさま。でも、彼らは村に残って、時々シュトゥットガルトやチューリッヒの催し物に参加するものの、静かに村で暮らしている。

78歳のRichardは映画の中以外では、ゲイということはいまだに隠して生活しているという。若い頃、自分のことに気づいた時はナチスドイツの時代で、ユダヤ人と同じく同性愛者も強制収容所へ送られるとのことだったので、静かに静かに暮らしていたとか。そんな中、1942年にスイスでは同性愛が罪ではなくなって、ダンスパーティーがあると聞き、参加しに行って初めて沢山の仲間に会えたという喜びを語っていて、なんかじーんとしてしまいました。他にも、Uweが初めてベルリンへ行って、田舎といろいろ違うことに驚いたり、お母さんにお土産を買うために入ったお店で、アフリカ人の店員の彼女と一緒に商品を選ぶ様子。彼女はドイツ語が下手だけど一生懸命働いています。彼女も外国人として、彼と同じようにドイツの社会では異端児だけど、二人ともとても明るくて、見ていてこちらもすごく嬉しくなりました。

私も興味半分で見出した映画でしたが、保守的な田舎の土地で暮らすことの大変さがよくわかり、また、彼らの静かな生活の中で、仲間に会うことがどんなに大事なことなのかもわかって共感したり、自分はどこまで彼らのことを受け入れているのかなぁ、と考えたり、良い映画でした。


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Commented by nyf1403 at 2008-09-25 02:32
こんばんは、はじめまして。ドイツシュヴァーベン地方で暮らしています。
私たちはヘテロの夫婦ですが、友達に同性愛の男性カップルが幾組かいます。
最近話題になったのが、バイエルンの田舎の小さい市の市長が、社会党で、そして同性愛の男性である、ということです。
by deutschebaeckerin | 2007-07-09 15:55 | ドイツの生活 | Comments(1)