「ほっ」と。キャンペーン

天然酵母 ⑨

f0141507_151728.jpg
「サクランボ+蜂蜜」酵母のパン(上)と、針の先ほどの極々微量生イーストから作ったパン(下)の比較です。一日後に焼いたイーストパンが有利になっては困りますので、パンの老化を戻すためにも、両方を同じようにトーストして温かくしてから、ダンナと一緒にテストしてみました。

以前にも書いたように、元々の酵母菌量が一定だったわけではありませんし、イーストの方がパン生地を作るまでにかけた時間が短いので、発酵力についてどちらがどうとは言い難いのですが、とりあえず、どちらでもキレイなパンは焼けました。クラムの色の違いは、サクランボ果汁の色のせいです。クラムの気泡、または弾力性も私には違いは感じられません。視覚・触覚テストの結果の違いは無しとしましょう。

次は嗅覚によるテスト。生地作り、焼成の時から言及していた通り、香りの違いは鮮明です。「サクランボ+蜂蜜」酵母のパンはフルーティーで僅かに酸っぱい香り、極々微量イーストのパンは、パンらしい香りがします。これはイースト臭ではないのですが、パンの香りだなと安心する美味しそうな香りがするのです。好みの問題ですが、食事用のパンと考えた場合、ダンナも私もイーストパンに一票です。

味覚テストですが、パンの比較テイスティングの時は、香ばしいクラストの風味が判断を大きく左右してしまうので、最初にクラムだけを味わいます。どちらもテクスチャー(歯ざわり)は同じ。まずは、「サクランボ+蜂蜜」酵母のパンですが、やっぱり少し酸味があり、フルーティーでとても美味しいのですが、どこか味わいが平坦な感じがします。このパンだけを食べたのなら、美味しいと感じると思いますし、これが好きだという人がいても全く不思議ではない感じです。次に極々微量イーストのパン。やっぱりこちらの方がパンらしい味で粉の美味しい風味がもっとうまく引き出されているような、そして全体的にもっと味に深みがある感じがします。この後は普通の朝食時の食べ方で、バターを塗って、蜂蜜やジャムを塗ったり、チーズやハムと一緒に食べてしまいました。どちらも美味しかったのですが、はてここで、「もうちょっと食べる?どっちのパン?」と聞かれたら?と想像すると、やっぱり「イーストの方」と答えてしまいますね。




「天然酵母崇拝者が苦手」という理由で始めたこの連載ですが、ここまで読んでこられた方はもう十分ご理解いただけたと思います。
- 愛情と手間
- パンの発酵の原点に帰ったような製法のパン
- 素材にこだわって手間暇かけて作る
- 粉の風味が生きた自然の甘みのある、味わい深いパン
という言葉は、別に「天然酵母」じゃなくてもいいってことです。風味というなら、粉などの素材にこだわるか、「何から起こした酵母」なのではなく、「どの酵母菌の種類」を使うかがカギなのです。もちろん、イーストを工業生産する過程が気に入らない、という理由で市販の天然酵母粉末を使うのは良いことだと思いますが、イーストが化学合成物質であるとか、対立点としてイーストを持ってくるのは見当違いということですね。実際、一般の天然酵母粉末とイーストの酵母菌種はどちらも同じSaccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ)、もしくはそれとほぼ同類の菌であると証明しましたよね。

パンに使える菌種をいくつか上げると、
Saccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス・セレビシエ) = パン酵母、ビール酵母、清酒酵母、白神こだま酵母
Saccharomyces exiguus(サッカロマイセス・エクスギュース) = Troulopsis holmii = パネトーネマザー粉末
Issatchenkia orientalis = Candida krusei = サワー種スターターに入っていることがある
Pichia saitoi = サワー種スターターに入っていることがある
Dekkera bruxellensis = ワインに入っていることがある
などなど沢山。

サッカロマイセス属の菌がパン作りに合っているようなのはよく分かりますので、天然酵母の種起こしでよく使用されているレーズンには、もしかしたらサッカロマイセス属の酵母菌がたくさんついているのかもしれないですね。

知識を持って接すると、天然酵母の種起こしもパン作りも成功する確立が格段に上がると思いますし、雑誌などのパンに関するウンチクの怪しさにも気づくことが増えるのではないかと思います。ここまで読んでくださって、ありがとうございました。とりあえず、これで今回の連載は終わります。
[PR]
by deutschebaeckerin | 2007-07-05 15:58 | パン | Comments(12)
Commented by tom at 2007-07-05 18:33 x
うーーーーん。。。終わってしまったあ! 残念!? 

 とっても楽しかったし、 普段無意識にレシピからパンを作って、試していたのですが、 これからいろいろと応用できそうです。 たとえば、 よく白神天然酵母の香りが嫌いな人が多いのですが、私は、あの独特の香りが好きで、けれども結構値段が高いのです。 あれを、微量イーストのやり方で元種を作って、パンを焼いてみようかな?と思います。  
 前から、みちえさんのレシピでフォカッチャを作るときに、 イーストの代わりに白神さんを使ってやっていて、 何気に成功していたのですが、 もっと知識と意識を持ってやると、いろいろと応用=倹約できそうです。 

 本当にありがとうございました。 
Commented by schokkolita at 2007-07-05 19:44 x
すっごく勉強になりました~!
読んでいてわからないところもあったりするのですが(科学のところとか、酵母の細かいところとか)、でも、とっても興味がある話なので、わくわく読んでいました。
ちょっと疑問に思ったんですが、酵母の名前って、何語なんでしょうか?
ドイツ語スペルじゃないですよね??ギリシャ語??
なーんて思ったんですが、違いますか??ドイツ語から遠ざかりすぎて、ドイツ語なのに、違和感を覚えているだけでしょうか?汗

本当に、日本人って、流行好きなんですよね~
その火付け役って誰なんだろ~??っていつも不思議になるくらい、あっという間に、いつの間にか広まってます。
こういうところ、よく言えば、とっても柔軟性のある日本社会です。

私の通っているパン教室では、小麦粉を使った酵母??を使った天然酵母コースなるものもあります。そのクラスに参加したいんですが、まだまだ基本コースなので、行けず・・・・涙  頑張ります!
Commented by deutschebaeckerin at 2007-07-05 21:51
tomさん、そうです!応用すると倹約になりますよね!白神こだま酵母で試される時は、念のためいきなり私みたいに極々微量にまでしてしまわずに、とりあえず半分とかからやってみて、様子を見ながら減らして行けばいいのではないでしょうか。私の場合も原理でうまくいくはずとは頭で理解して自信はあったものの、あまりにも透明で粉と混ぜて何時間もしてブクブクっと来るまで少し心配でしたし。


schokkolitaさん、酵母名はドイツ語ではないですね。「化学名」なので、どこでも一緒なのではないかと思うのですけど。
そうですねー、日本人って流行好きで柔軟ですよね。
小麦粉を使った酵母??何か分からないですね・・・・嗚呼、そういうあやふやなの、私は苦手です。
Commented by joghurt at 2007-07-05 22:10 x
私はそんなに若くないんです。数年前に勉強したのは、職業学校で、高校は十数年前なんです、じつは。 私も、天然酵母とあれば食べてみたくなります。でも、かといってそんなにおいしーというわけでもないんですね。それって、作り方が下手なんかなーって思ってたけど、そうでもない事が分かりました。嗜好は人それぞれで、その独特の香りや味が良いか悪いか、その人が判断すれば良いので、情報に踊らされる事無く、わたしもまたいろいろ食べていきたいですね。
私も何か情報提供ができればと思うのですが・・・。また楽しく読ませてもらいます。
Commented by tan at 2007-07-05 23:14 x
終わってしまった! ほんとにわくわくどきどき、どんな味になるのかなと楽しみに読みました。やっぱり、イーストがパン作りにこれほど普及して使い続けられているのには、それ相応のよさがあるからだ、と確信しました。それにしても、パン作りの酵母について、ライブの実験付きで、これほど詳しく読めるなんて、幸せ! こういう理論、難しいけど私はすごーく好きです。分かるとますますやる気が出るし、自分で判断できる部分が増えます。きっと、こういうところまで知っているかどうかがプロと趣味の違いなんですねー。知識を分けてくれてありがとう!
Commented by deutschebaeckerin at 2007-07-06 02:33
joghurtさん、失礼しました。年齢の話なんてしてしまって。
作り方が下手っていうのもあると思いますが、まぁ、買う方も自分で判断できなくて情報で(頭で)食べてる人って多い印象です。でも、それでその人が幸せなら、いいのでしょうね。

tanさん、私も適当に書き始めたものの、実験するうちにのめりこんでしまいました。楽しかったです。今度また何かテーマをみつけたらやってみようかな。とりあえず、今回の内容はまとめてサイトの方にも載せたいと思います。理論が分かると、きっと上手になりますよ~!美味しいパンができたら教えてくださいね~!
Commented by まあこ at 2007-07-06 07:57 x
なんか大学の生物学の講義思い出してしまいました。ブドウ糖の分解についてレポート書かされて、いろいろと文献を読んでずいぶんと苦労したものです。
Michie さんの今回のレポートは、家庭でパンを焼いているものの、天然酵母ブームに乗り切れずにいた私に取っては、目から鱗。いい加減ではなく、しっかりと科学的根拠にもとづいた説明。一生懸命読んでしまいました。ご苦労様。そしてありがとうございます。
さて、白神酵母ですが、少量でも時間をかけて発酵させると、実に味わい深いパンができます。4分の1の量で48時間冷蔵発酵した後に成形して焼いていますが、休日の朝ご飯にぴったりです。今度は、もっと量を減らしてみようかな。化学実験みたいでちょっと若返った気分です。
Commented by tan at 2007-07-06 12:21 x
きたー! 今日、初めてお目にかかった方と、パンを焼く話になりした。私もドイツ風のパンを焼いています、と言う話になったのですが「ドイツと言えば本場だから、天然酵母でしょ?」ときました。いや、普通にイーストや乾燥ザワータイクを使っています、と言ったら、「本格的じゃない」とみなされたらしく、「イーストのパンはイースト臭があるでしょう」とか「ドイツの本格的なパン屋さんでは天然酵母と有機穀物のパンを売っているんでしょう」とかつっこまれ。なんだかすごく思い込みがあるんですね。周りの人たちも声をそろえて「やっぱり天然酵母はおいしい」の大コーラス。反論するのも面倒だから、そうですかー、私は無精なもんで、と適当に合わせて来ましたが、同じ「パンを焼く」でも、私とは違う世界の人たちだと思いました……。
Commented by GYON2 at 2007-07-06 14:48 x
連載を最後まで楽しく読ませていただきました。
興味深い実験(?)ありがとうございました。
私も『天然酵母』(あえてこう呼ばせていただきます)には少なからず興味を持っておりましたが、何冊本を読んでも、天然酵母パン教室に参加しても頭の中は?????がいっぱい。
どれもこれも宗教がかってるというか、なんというか…
今回のみちえさんの連載でなんとなくふっきれました。
大学の時の微生物学と食品衛生学の教科書を読み返してから、
もう一度『天然酵母』について考えてみたいと思います。
Commented by deutschebaeckerin at 2007-07-06 19:07
まあこさん、天然酵母ブームってパンのことをよく分かっている人の方が冷ややかな感じがしますよね。私も「そんな言うほどすごいか?」って7年前ですら思いました。白神酵母の量を減らして低温長時間熟成で作られているんですね。美味しそう~。実験、ぜひいろいろやってみてください!

tanさん、うわっ、きましたね・・・・そうでしょ、そうでしょ。反論する気もしないですよね。パンに関するどんな質問も、「ですよね?」って聞かれる時点で私はすぐに身構えちゃうんです。どうせ賛成意見しか聞きたくないんだったら、最初から聞かないでって感じで。「そうかもしれないですね」って適当にしか答えないんですが、後で「みちえさんもそう言ってた」とか言われるからもっと腹が立つんですよねーーーー!!

GYON2さん、本とか教室ってお金とってるのにそんな適当な説明なんですね。って、たぶんやってる本人も分かってない場合も多いのかもしれないですけど。ぜひ一度、じっくり向き合ってみてください。最初は難しいかもしれないですが、パッと分かる時がありますよ。
Commented by kin at 2008-01-12 17:49 x
はじめまして。kinと申します。北海道でパン屋を営んでおりますが、非常に勉強になりました。ありがとうございます。サワー種には酢酸菌はいないのですね・・・。僕も「体に良いから」とか「安全・安心だから」とかの理由で天然酵母パンを求めるのは間違っていると思います。また、東京の有名店の様な不必要な酸味は素材の味をじゃまするだけでは・・・と考えています。
僕もブログで天然酵母の育て方を公開(一部限定ですが)しています。みちえさんの方法とは違うし、説得力のある説明も出来ていませんが、よろしければご覧ください。
みちえさんのシュトレン、食べたかったです。まだまだ先の話ですが、今年も送っていただけるなら是非お願いいたします。
Commented by deutschebaeckerin at 2008-03-06 02:29
kinさん、はじめまして。
お返事遅くてすみません!
あ、東京の某有名店!私は8年前に食べたとき、ツーンと酸っぱくてびっくりしたんです。同じお店かな?
kinさんのブログ、少し拝見させていただきました。大阪の方なんですね、1999年が転機とは私と同じですね。美味しそうなクロワッサンの写真と炊きたてご飯にかけたくなっちゃうような元気そうな卵に目が釘付けでした。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


<< 水泳 天然酵母 ⑧ >>