2007年 06月 28日
天然酵母 ①
例えば、市販のパンで「天然酵母入り」がセールスポイントになっているものがあったり(「入り」って何でしょう?天然酵母が体にいい成分みたいな?ユダヤ教のおまじない入りパンみたいに、ますます原理主義っぽいですよ)、そして一番厄介だと思うのは、「こ~んなに時間をかけて大事に作りました」みたいな自己満足の押し売りをするような作り手が多いことと、そういう方達や天然酵母崇拝者はイーストをなぜか敵視するような傾向があることです。一般的なイーストではない酵母で作るパンを「天然酵母のパン」と呼ぶようなので、私の作るサワー種やバックフェルメントのパンも天然酵母パンなのだと思いますが、そのパンを差し上げた方から「これって、天然酵母?」などと味見をする前から聞かれると、私はかなりイラッときます。「天然酵母の定義を言ってみなさいよ、そういう質問すること自体、パンのこと分かってないんだから、黙ってなさいよ、ごるぁ~~!」と言いたいのをグッと抑えることもたびたび。あ、怖いですか?(笑)
近所の農家で買ってきたサクランボ10個を半分に切って、蜂蜜小さじ1/2と水を混ぜてみました♪
なんちゃって。
文句だけ言ってるように思われては困るので、私も作ってみました。
これは、昨日の午後作りたての写真。
今朝はすでに小さな気泡が表面に時々浮いてきています。
さて、私が「天然酵母」という言葉と知り合ったのは、かれこれ7年半前。リニューアル前の当時のホームページに記事を書いていたので、それをここにご披露してみましょう。当時よりずいぶん作る人は増えたとは思いますが、定義がはっきりしないあたりは、7年以上経ってもあまり変わってないようですね。
天然酵母とは何か
ってちゃんと教えてくれてるサイトには、いまだにめぐり合っていません。
ですので、私の思うところを少しだけ書いてみたいと思います。
もし、「天然酵母」の定義が存在するとか、それが書いてあるサイトを知っているとかいう方がいらっしゃいましたら、
間違い指摘を含め、アドバイスをいただけると嬉しいです。
酵母(Hefe = イースト)とは、自然界にあらゆる形で存在する微生物のことで、
食べ物を個性豊かに変化させるものを特に Kulturhefe(培養酵母)と呼び、
醸造酵母(ビール)、蒸留酵母(ブランデー)、ワイン澱などが含まれます。
パン屋はかつて、近くのビール醸造所からの上面発酵(註1)のビールを使ってパンを作っていましたが、ビール醸造が底面発酵(註2)へと移り変わる中で、酵母の入手が困難になったため計画的に工場培養したイーストを使うようになりました。
現在のイーストは、砂糖を作るときに出る廃糖蜜をエサとして、純粋培養したものです。
さて、この酵母は生きていくためにエネルギーが必要なのですが、その獲得にあたっては二つの道があります。
酸素があれば、呼吸することによって。
酸素がなければ、糖分を酵母の酵素で分解してアルコールと二酸化炭素を排出することによってです。=アルコール発酵
天然酵母と呼ばれるのは、もちろん後者の場合でしょう。
なぜなら、酵母作りの手順は、瓶など密閉できる容器を煮沸消毒して冷まし、その中にドライフルーツや果物、根菜のすりおろしなど・・・・と水を入れて蓋をしてほっとく・・・というものですから。
酵母のエサとなる糖分は、果物の場合はきっと果糖が水に溶け出したものなのでしょう。
イモ類や穀類などの場合は、水に浸かることによって自身に付いている、でんぷん消化酵素アミラーゼが活動して、でんぷんを糖分に分解するのだと思います。
ドライフツーツの場合だったら、なんとなく天日に干されて空気中の酵母をいっぱいからだにくっつけてるっていう想像ができるけど、生の果物やイモ類などの場合、皮をむいて密閉瓶に入るまでにはちょっとだけしか空気にふれてないのに数日でアルコール発酵が目で確認できるまでに酵母が活動するなんて、なんだか信じられないような気がします。
以上が、私が思う天然酵母のしくみなんですけど、生物専門という訳でもないし、本やネットでたった数日かじっただけの私の「思い込み」かもしれません。
註1:上面発酵酵母は、10℃~15℃で活動し、発酵を終えた酵母は表面で泡を形成します。
註2:底面発酵酵母は、5℃~10℃で活動し、発酵を終えた酵母は底に沈殿します。
これが、ベルリンの最初のマイスターのところに弟子入りして1年目だった2000年3月に書いたものですが、まあ間違いは無さそうな気はしますが、とっかかりだけで天然酵母を最後まで説明しておらず、説得力に欠けますね(笑)。とりあえず、「嫌気呼吸」の中の「アルコール発酵」が酵母菌による「発酵」であることまでが説明されているように思います。自然界に存在する(糖分の多い環境に生息し、果実の皮などにも附着している)酵母菌が、出芽や分裂をして増殖しやすい環境を作ってやる作業が、「天然酵母づくり」なのでしょうね。
2000年当時も
実際、イーストだって自然界のものなのですよ。
と、私は書いていますけれど、「天然酵母づくり」が自分の手で酵母を培養してるように、市販のイーストだって文中にあるように、パン作りに適した酵母菌株を廃糖蜜を培養床にして純粋培養してるにすぎないのですから、イーストと天然酵母が対立するものでもないのです。もちろん、ドイツのBIOパン屋は、オーガニックの環境で純粋培養したBIOイーストを使いますけどね。というのは、イーストを工場生産する過程で窒素やリン、硫黄などが添加される、それらを酵母が全部使い切らずに市販のイーストに残留している場合がある、と考えるからなのです。しかし、リンや硫黄は生体にとって欠かせない元素、つまりミネラルであって、酵母が増殖するために必要なように人間の体にもある程度は必要なものなので、薬品の入ったものというわけでもないのです。過剰摂取など極端な議論はしたくありませんし、それを言うなら天然酵母の雑菌はどうなの?ということになりますね。
とにかく、ガチガチの天然酵母信者は私は苦手だってことで。
引き続き、私の「サクランボ+蜂蜜酵母」ちゃんの様子を含めて、酵母やパンの話をしてみましょう。
私も深くは勉強していませんが、酵母を果物から起こすときにはやっぱり充分な酸素は必要で、 一日に何回かふたを開けて混ぜたり、ふってあげないといけないようです。 生のフルーツの場合は糖分を、砂糖や蜂蜜で補充するようです。やっぱり、取れたての果物を洗わないのが起こしやすいようです。(ドライフルーツでない場合) レーズンなども、洗浄やオイルコーティングされているものは、起きません。
ただ、日本に帰ったとき、いかにも安っぽいパンに、天然酵母入りと書いてあって、裏を見ると、主要ファーマネントはイーストなのに・・・いろいろ悪いものも入ってるし・・・絶句!
また、人生哲学主張しているパン屋さんもいるし、それはそれで面白いけれど、そういうところが、みちえさんは苦手なのかもしれませんね。
「天然」物が必ずしも人間の健康に良いわけではないのですが、どうしても「人工合成物=健康被害」という消費者の漠然とした不安に付け込まれているような気がします。
これからの世の中、ますます正確な情報が必要ですね。
みちえ先生の微生物講座でよく勉強しなくちゃ。
旦那も、くれぐれもヨロシク、とのことですのでーー!(いつかそちらでお目にかかりたい!と(笑))
ところで、この手の話題になると、思わず、書き込んでしまいます、やはり。
私は、パン屋ではないので、それほど風当たり(?)は強くないですが、それでも
店で自家製パンを出しているときには、この攻撃(「天然酵母ですか?」のあれです(苦笑))には
遭遇することが多いのです。思いっきり「インスタントドライイーストですよ」と申し上げておりますが
私だって、果物の風味香るソレが嫌いな訳ではないのです。むしろそれが大好きだったりしますが
天然酵母>>>>>>ドライイーストという偏った考え方に遭遇したときに思わず反発してしまうのです。
酵母ではないですが、旦那は食材を扱うため、よく同じような体験を食材に関して経験するようです。
詳細は割愛しますが(苦笑)、どの世界でも、内容の伴わないネームバリュー先行型(?)が
勢いを増すと、何か言わずにはおられないってことでしょうか。
いや、ただのアマノジャクなのかもしれません、私ら、夫婦は(苦笑)。
>生き物感覚なのかも? 製造の過程がすべて自分の手の内にあるという、快感?
記事にも書いたとおり、別に楽しんでる分には構わないですし、美味しいなら別にいいんですけど、その「入り」みたいなのとか、哲学も・・・ちょっと。そういうのが苦手なんですよねーー。東京のバンダナ巻いちゃってる人たちのいる有名なパン屋さん(今もそうか知りませんが)で、いつだったかな~6年ほど前かな、私、衝撃的な出来事がありまして。いつも笑い話にしてるんですけど、ネットで書くのはどうかと思うのでやめときますけどねー。宗教がかってるのは勘弁してって感じですね~。
tanさん、やっぱり違和感かんじてる人って実は沢山いると思うんですよね~。でも、どう反論すればよいのかも漠然と分からないというか、そういう方へのお手伝い記事にしたいですね~(笑)。
Masayoさん、おぉ~ご主人様もやはり同じような経験を・・・。まぁ、私も一時BIOにはまってBIO以外を買わなかったりとかやたら偏ったりもしたこともありますけど、だからと言って他人の行動にまで口出ししませんしねぇ。思っていても。「良いことしてるんだー」と思い込んでて、それを他人に押し付けたい人って厄介ってことですねー。Masayoさんご夫妻が天邪鬼ってことはないですって。日本ってどうも情報が氾濫しすぎてて、よく分からないのに表面的な知識だけで思い込みをしてる人が多いだけじゃないでしょうか、まさに「内容の伴わないネームバリュー先行型」が多いんですよね。
まあこさん、サワードゥスターター、そういえば私もサンフランシスコ土産にもらってずっと持ってます。使わなきゃ!!それがあるなら、わざわざワイルドイーストを起こすことはないですよ。まあこさんの今のやり方で全く問題ないです。種起こしからするとどうしても乳酸菌と酵母を雑菌に勝たせなきゃいけなくて、そうすると間引き生地がいっぱいできてしまいますからねぇ。実際、ドイツのパン屋で一から起こすところや、何十年も種継ぎをしているところは本当はもう皆無でしょう。なぜなら、現実問題として品質管理の観点から言えば、理論的にそれはあまり良くないことというのが業界の常識だからです。
たまにBio Marktをのぞいたりして、そこで買い物もしますが、確かにいいものもたくさんある中、「?」なものも。
たとえば、Bioのサンダルって…。
なんでもBioくっつけりゃいいってもんでもないと思うんですよね。