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ドイツの製パンマイスター試験 1-2部

ドイツのマイスター試験は内容によって4部門に分けられます。第1部は実技、第2部は筆記、第3部は経理経営、第4部は教育論です。

第1部の実技は、十八時間つまり3日間かけて行われます。

最終的に作ったものを自分用のショーウィンドウに飾るので、テーマを決めてそれに合った見た目や内容のものを作ります。私はテーマに「スイスの建国記念日」を選びました。

作品イコール製品ということで、製品情報をまとめたレポートも事前に提出を求められます。レポートは、製品の紹介文やレシピの他、原材料費+人件費+税金と詳しく計算して導き出された価格、栄養価を書き、写真付きでカラー印刷してオフィス用薄型バインダーにきれいにまとめて提出します。

実技試験内容:

スペシャルブレッド(粉総量5キロ、サワー種使用)
小型パン4種類以上(粉総量5キロ)
スウィーツ3種各10個以上
文字入れしマジパンなどで飾りつけをしたデコレーションケーキ
ライ麦パン(粉総量5キロ、サワー種使用)
小麦パン(粉総量5キロ)
カイザーゼンメル等日常食する小型パン3種以上(粉総量3キロ)
デニッシュ4種各10個
パイ製品4種各10個
菓子やスナックの分野から2種(1種は自分で決められるが、もう1種は試験当日に試験官から指示されたもの)

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サワー種はもちろん自分で熟成させます。9人が同時に試験を受けるので、3台のデッキオーブンをどう使うのか、必要な焼成温度や時間について事前に話しあって場所と時間をキープしておく必要がありますが、皆で大体同じ流れで作ることにしておけば、大きな問題にはなりません。

私はスペシャルブレッドに、スイスのグラウビュンデン州で食べられる蕎麦粉を使った郷土料理ピッツォッケリというパスタをヒントに、炊いた蕎麦の実を加えたパンを作り、スイス国旗のようにハサミで表面に十字の模様が出るように切れ目も入れました。

小型パンにはスペルト小麦をいろんな形で入れたパン(グリューンケルンという、麦がまだ青い時期に収穫して焙り、乾燥させたものを粗びきして炊いたものを加え、スペルト小麦バックフェルメントで発酵)を作り、ライ麦パンも発芽ライ麦粒を炊いたものを加えたライ麦100%パンを作りました。

このように、せっかくのマイスター試験ですし、私は日本人的に内容に凝ってみましたが、ライ麦パンであれば、試験規定ギリギリにライ麦60%ぐらいで既存のレシピのまま無難にこなすのもありです。もちろん、作るものの難易度や工夫も採点に大きく寄与しますが、とにかくマイスターのお免状だけが必要な要領のいい跡継ぎ君たちは無難路線でサクサクと準備も当日の試験もこなしていました。

実技試験には販売も入ります。ヴァインハイムでは販売員向けのセミナーも開催されているので、校舎の一部に練習用のパン屋の売り場が常設されているのです。そこで試験官を相手にパンやケーキの説明をしたり、お祝いケーキやケータリングの注文を受けたり、包装をしたりします。

第二部は、製パンについての筆記試験です。

まず、朝8時から100分間専門計算の試験から始まります。例えば、牛乳を使うレシピをスキムミルクで代替する場合に分量がどう変わるか、サワー種熟成の際の粉と水の量、目標どおりの捏ね上げ温度を達成するために水温を何度にすればよいか、クッキー詰め合わせを作る時にどの種類を何グラムずつ詰めたら売りたい価格のものができるかといった感じです。ドイツ語が理解できれば中学校程度の方程式で全部解けますからご安心を。

10分の休憩の後、第二部で一番重要な100分間の製パン理論の筆記試験があります。これを落とすと、例え他の教科で合格点に達していたとしても翌年マイスター試験のやり直しをさせられます。

栄養、サワー種とライ麦パン、小麦小型パン、焼成過程、菓子生地といった5つのテーマにそってそれぞれ3問文章問題が続きます。例えば、「ライ麦パンにサワー種を可能な限り最大の割合で入れたのに風味が少なく、パン自体の老化も早いです。使用したライ麦粉のタイプは997でフォーリングナンバーは260でした。このパンの失敗の理由と救済策を述べなさい。」さっさと読んでどんどん進めないと時間が足りなくなってしまいます。

その後さらに10分休憩の後、50分間の原材料についての試験があります。穀物について種類や栄養構成について簡単なものなら職人試験でもやりましたが、マイスター試験ではでんぷんの構成や粉の科学に関する設問も入ってきます。他には砂糖やチョコレートの生成過程に関する質問などです。

ここでやっとお昼休みがはいり、午後は、マーケティングの筆記試験が60分あります。パン業界に関連する新聞記事を読んで意見を述べたり、「十一月におすすめとして売りたい商品を決めて、どのように宣伝活動をしたいか述べなさい」「その商品のためのチラシのレイアウトをしなさい」「販売員のためにその商品の製品情報をリストアップしなさい」というような問題が10問出ます。

最後は原価計算や販売価格計算の試験が70分あってマイスター試験第二部は終了です。途中休憩をはさみながら朝8時から午後4時まで丸一日がかり、とっても疲れました。
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by deutschebaeckerin | 2017-01-07 15:59 | パン | Comments(0)


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