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私のマイスターコース時代のお話

皆様、あけましておめでとうございます。

今日は10年ぶりぐらいに、私のパン職人時代のお話の続きをご披露いたします。
本家「みちえのパン工房」の続きのお話です。
これらは4年前に専門誌B&Cに掲載したものです。

まずは序章ということで、ざっくり全体のお話をしておきます。
後日、試験の細部について詳しく書きますね。

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2006年1月、私はドイツのヴァインハイム製パン学校のマイスター試験準備コースに通い始めました。半年間、スイスにいる夫とは別居です。

ちなみに、ドイツ各州のパン組合の学校でマイスター準備コースを受講することができます。私はベルリンのゲゼレ試験でトップだったため、もし、ベルリンでマイスターコースを受講するなら奨学金をもらえるという賞品がありましたが、当時のベルリンのマイスターコースは仕事をしながら夜間や週末に受講するという1年以上かかるものだけでしたので、さすがに夫と別居するには長すぎると思い案は却下。義父母宅から車で1時間のヴァインハイムに決めました。ここは宿泊施設が併設されていて、朝から晩までドイツ語で勉強勉強勉強・・・その代わり、5ヶ月間で試験まで済んでしまいます。

ところで、朝から晩まで勉強という環境ですが、自分の好きなパンに関する理論や実技だけなら、それでもまだなんとかなりそうなものですが、マイスターというのは、お店を持つ資格を得ること、すなわち、経営のこともわかっていなければいけませんから、簿記の勉強あり、税金や従業員の社会保険や休暇について、はたまた若い弟子を教える立場になれるということですから、教育論もあります。学校の立地も市街から少し離れた閑静な自然の中・・・勉強するにはもってこいなのでしょうけど、同じ場所で朝から晩まで勉強ばかりしていると、だんだん嫌になってきましたね。

併設の宿泊施設は一般に開放されたホテルでもありましたし、職人向けセミナーに参加する人たちが泊まったりもするので、ホテルの朝食用パン作りは私たち生徒の仕事でした。割り当てられた日の前夜はサワー種などの仕込みをし、当日は朝4時から工房でパン作りです。実技の授業とは違って自分の裁量でパンが焼けますし、息抜きになってとても楽しかったです。もちろん、作ったパンはその日の授業の最初に、みんなの前で先生から批評を受けるというのが日課になっていました。パン作り担当の日は一日が長いこともあり、午後の簿記や教育論の時間はまさに睡魔との闘いでした。

当時は、仕事をしながらゆっくり勉強できるベルリンのようなパートタイムのコースの方が合ってたのではないか、と思ったこともありましたが、仕事をしながらシュトゥトガルトでマイスター試験に通った友人によると、ただでさえハードなパン職人という仕事の他に勉強までしなければいけないし、一年以上かかるとモチベーションの維持がだんだん難しくなってくる、と話していて、一長一短だなぁと思いました。

さて、2006年のマイスターコースの生徒は26人、半分以上が実家がパン屋だという跡継ぎ君たち。途中で一人脱落してしまいましたが、日本人は私を含めて3人いました。これは本当にたまたまであって、日本人はベッカライ・ビオブロートの松崎さんが私たちの数年前にご卒業されただけだと、先生がお話されていました。

マイスターコース初日は、自己紹介や先生の紹介があった後、筆記テストがありました。このテストの目的は、受講者の技術レベルのチェック。テスト内容は ゲゼレ試験と同じような感じだったので、事前にスイスでぱらぱらと昔のノートを見ていた私は、80点台は取れました。しかし、スイスのパン屋にいた私は、サワー種の熟成段階の計算方法とか ドイツらしいパンの発酵時間や分割重量などがあやふやになっていました。先生も、「マイスターコースは、日々の仕事で理論などの勉強から少し遠ざかっていた職人達にとって すごく良い機会。弟子時代とは違って実務での経験があるから、理解が深くなる。」と言っていたとおり、自分の弱点に最初に目を向けることができてよかったです。

私たちがコースに通った2006年からマイスター試験の受験資格が大幅に緩和されて、「職人として働いた経験が最低3年あること」という項目がなくなりました。結果として、数ヶ月前に職人試験に受かったばかりの経験の少なすぎる生徒が、マイスターコースに数人いて、彼らがなかなか勉強や実技についてこれないので、先生も困っていました。実際、一人は途中脱落、一人は試験に落ち、もう一人はきっと受かったのでしょうけど、卒業パーティーなどにはまったく顔を出しませんでした。

さて、製パンに関する勉強内容ですが、理論も実技もさすがに職人試験よりも高度で、「粉」だけでなく「卵」「牛乳」といった材料一つ一つについて、そして何よりサワー種について本当に詳しく長く勉強しました。おかげで、試行錯誤してレシピを作るのではなく、理論から導いてレシピを組み立てていけるようになりました。今でも全てが頭に入っているとは言えませんが、教科書やノートのどこを開けばヒントが載っているかは分かります。

f0141507_63276.jpgマイスター試験は2日半かかって、サワー種を使ったパン、雑穀パン、小型パン、デニッシュ、パイ製品、デコレーションケーキ、デザートになるようなケーキやプチフルール、その他に当日試験官からお願いされたパンやお菓子を2品、作るものは全てかなり大量です。そして、最後は作ったものを全てホールに運び込み、自分用に用意されたスペースに一時間でショーウィンドーを飾りつけます。皆、マイスター試験なんて一生に一度で初めてですし、普通、工房ではチームワークのところを、一人で計量から焼成、はたまた飾り付けまでしなければいけないのと、同じ日に試験を受ける9名で3台のデッキオーブンを共同で使うので、作る順番や時間をうまく話し合っておかないとオーブンの温度設定などで喧嘩になってしまいます。そんなわけで、思っていたより綿密に試験当日のスケジュールを決めておかないといけません。

それでも、なんとか時間に間にあって、みんなの作品が並びました。製パン、簿記、教育論、経営の筆記試験もそれぞれ半日から一日がかり、プレゼンテーションや試験前に提出する書類もなかなかハードでした。5ヶ月間ずっと試験のプレッシャーがあってよく勉強したので、試験が終わった時はやっと開放されて周りが見えるようになった感じでした。コースが始まった時は真冬だったのに、気づいたら木々の緑と太陽のまぶしい夏になっていました。 ゲゼレ試験の時も、その時なりに大変でしたが、やっぱりマイスター試験は外国人だとなかなかしんどいですね。
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by deutschebaeckerin | 2017-01-04 06:03 | パン | Comments(2)
Commented by tomomato at 2017-01-05 01:56
明けましておめでとうございま〜す。
今年はたくさんブログを更新してくださるのかな〜〜^ー^
マイスターコース時代、本当によく頑張られましたよね〜 着実に前に進んで行くみちえさんを見ていると本当に頼もしいです。 お子さんがいながらもお仕事も頑張っているし、 すご〜〜い  爪の垢を煎じて飲みたい2017年です。
Commented by deutschebaeckerin at 2017-01-05 03:53
tomomatoさん、はい、今年はブログ(ここ、どんぐり倶楽部)、会社のウェブサイト、Facebook(会社とどんぐり倶楽部)を充実させたいと思います。今まで書き溜めていたものもあるし、頭の中からあふれ出しそうなぐらい、これまでの経験でお伝えしたらどなたかのお役に立ちそうな情報(パン、会社、育児)もあるので。やることは沢山ありますが、会社も子育ても、前がくもってるがために何をしたら良いのかわからない、というような焦る気持ちはなくなった状態です。


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